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不機嫌男の夏休み

2009年08月28日 22:35

慌ただしい帰省を終え東京行きの新幹線に乗り込んだオレは、薄暗い車内で読書に夢中になっていた。
景色がよく見えるように、わざわざ一時間も待って窓際の喫煙席を選んだのだが、その目論見ははずれてしまった。

目の前の景色が猛スピードで吹っ飛んでいく。
当然といえば当然だが、しかし、少し遠くに目をやれば、だだっ広い海や、連なる山の稜線が見えた。それを目で追いながら、広大な自然に思いを馳せようとすると、いきなりトンネルの壁や無粋な工場の建物が目の前に現われて、せっかくの景色が寸断されてしまう。
それも、かなり頻繁にだ。
つまり、景色をゆっくり楽しむには新幹線での旅はあまり適していないのだ。
ついにオレは景色を眺めるのをあきらめて、読みかけの小説に専念することにしたのだった。

それでも読書に疲れると窓の外をながめて目を休めた。
ちょうど愛知県をぬけて、静岡県にさしかかったあたりだ。今日はよく晴れているのできれいに富士山が見えるはずだ。
オレは本を読むのを中断し、日本一のシルエットの彼を探してみた。
いつもなら誇らしげに立つ彼の姿はすぐに見つけられるのだが、今日はすこし時間がかかった。というより、それが彼だと気付くまで時間がかかってしまったというべきだろう。
今日の彼は、恥ずかしそうに、あるいはすねてしまった子供のように、まるで帽子を目深に被ったみたいになっている。
ねずみ色の生クリームのような大きな雲が、山頂付近をすっぽり覆っていたのだ。
今日の彼は、すこし機嫌が悪かったみたいだ。残念なような気もしたが、これはこれでなかなか良いような気もした。いつもいつも、銭湯の絵そのままに突っ立ているわけでもなかろう。
それに昔、読んだ漫画の「東大一直線」に”上京する時に富士山がきれいに見えると試験におちる”というジンクスのことが描かれていた。
むろん受験生ではないが、世間に出たら毎日が試験みたいなものだ。
だから、富士山がよく見えなくても、たぶん、これでいいのだ。

帰省したら、必ず会う無二の親友がいる。彼とはもう二十年来のつきあいだ。
今回も再会を果たし、互いの近況を報告したり、これからのことを話しながら車をとばす。
正月は毎回、決まって伊勢神宮へ初詣に出かけるのだが、夏は特にこれといったことはない。
だからあてもなくドライブして、腹が減ったらメシ食って、時間が余ったらカラオケやゲームセンターに行ったりして、かなり適当に遊んでいたのだが、「さすがに毎回これじゃあね」ということで、二、三年前からは目的地を設定することにしていた。
今回は海を目指すことにした。
去年は山をドライブして、失敗したからだ。かなり身の危険を感じた・・・いや死の恐怖すら感じたのだ。
その日はうす曇りだったが、ドライブするのにたいして影響はなさそうだった。
とりあえず山を越えて滋賀県まで足を伸ばそうということになった。一行は峠のスカイラインを行くことにした。
走行中、天気が怪しくなり始めた。
だが引き返すわけにもいかず、そのまま峠の上までやってきた。
あたりは霧に包まれている。一メートル先も見えない深い霧だった。
オレ達は下界とは違う山の天気に心底、恐怖を覚えた。
慎重にハンドルを切る親友。ひとつ間違えると、ガードレールの向こうへ真っ逆さまだ。
助手席のオレは彼に命を預けるしかなかった・・・。

ふと運転席の方を見ると、彼は片手で何か別の作業をしていた。携帯で写メっていた。

オイイイィッツ!!!

頼むよお、確かに滅多にお目にかかれない光景かもしれないけどよー、マジメに運転してくれーッ!

濃霧に加え、軽い高所恐怖症のオレは冷や汗を浮かべながら彼に懇願した。
まったく生きた心地がしなかった。

そんなことがあったので、山は懲り懲りだった。オレ達は海を目指した。
とはいいつつもコースの都合上、山道は避けられない。
伊勢志摩スカイラインを行く。今回は天候に恵まれ怖い思いをしなくてすんだ。
朝熊山から下界をながめた。
gekai2.jpg
                                asamayama.jpg

海に着くと、二見ヶ浦の夫婦岩などを見て回った。                      meotoiwa
海を見ていたらすこし穏やかな気持ちになれた。

どうだい、なかなか観光っぽいだろう?
そんな感じで、夏休み気分を堪能した一行は、正月にまた会おうと約束して、それぞれの日常にもどっていったのだった。
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